お疲れ様です。はらです。
デザインを本格的に始めて5年目になる30歳の男です。
趣味は映画鑑賞、読書、アイドル鑑賞です。

前回のあらすじ

送別会の夜、オオノさんからプレゼントされた「コードギアス」のDVDボックス。それは何と、フランスの商品だった。突然聞こえたフランス語に動揺を隠せない私だったが、フランス語での全話視聴を心に決めるのであったー

くわしくはこちら

結論から言おう

さて、前回に引き続き、今回もコードギアスフランス語鑑賞記です。タイトルを見てピンと来た方もいらっしゃるかもしれませんが、結論から言います。

全話視聴は諦めました。

だからエピローグです。本編なし。理由としては、月並みですが、視聴モチベーションが保てなかったことが一番大きいです。結局1クール分(13話まで)しかフランス語で観ていませんが、それでも物凄く沢山の気付きがありました。

闘いの日々

コードギアスをフランス語で鑑賞する日々が始まった。フランス語の響きというのは、とても優雅だ。それでいて、非常に難解だ。私の予想以上に何を言っているのか判らない。英語との共通点もほぼほぼ無い為、単語や文章のパターンを全く掴めない。

キャラクターの名前にしても、13話まで観た時点で、結局

ルルゥーシュ

ルルーシュ

スゥザァク

スザク

この二人しか判別が付かなかった。エンディングに書かれているキャラ名もいつまで経ってもどれが誰だか判らない。これは予想外だった。

そして、とても当たり前の事を言うが、こういった物語が主軸となる作品を観る上では「言葉が解る」ということが物凄く大事であることを痛感した。話の内容がビックリするくらい入ってこない。ルルーシュが学生だと理解したのは、第3話のことである。急に学校のシーンが始まって腰を抜かした。

学生だと解っていたら1,2話の見え方が違っていただろうなぁ…

言葉を封じられて

フランス語で語られるセリフというのは、耳には確かに届いてはいるが、もはや「無い」のと同じである。耳からの情報を遮断された状態で作品を観ると、普段は感じない様々なことを感じることが出来た。

感情よ何処へ行った

私は、アニメやドラマを観る時、登場人物に物凄く感情移入するタイプだ。一つ一つの出来事を登場人物と共に感じ、考え、物語の中を進んでいく。登場人物の気持ちに寄り添う形で作品を楽しんでいる。だが今回は、セリフの情報が一切無い。視覚から得られる情報には限界があって、登場人物の感情が表出した時、「突然笑った」「何か判んないけど泣いてる」といった事態になるのである。

笑ってる。これはどういう状況なのか。ハロウィンか?
なんで泣いてる?

普段のスタンスがスタンスなだけに、これがなかなかしんどいのだ。他人の感情の発露に対して全く心が動かない。何というか、人でなしになった気分になる。

苦しさを体感

耳からの情報に頼れない分、目の方はいつもより頑張って働いている。視覚から得る情報にはいつもより敏感になり、画の印象がよりビビッドに目に飛び込んでくる。

そんな中で特にキツかったのは、第10話のこのシーン。

赤い髪の女の人(名前が判らん)が乗ったロボ的な物(ナイトメアなんちゃら?)の特殊装備(なのか?)が物凄い熱(だよな?)を放って敵の機体を破壊するシーンでの、敵の機体のコックピットの描写である。これがまあ熱そうなこと苦しそうなこと。セリフが判れば、それを同時に聞きながら観る為に印象が分散するのだが、視覚の情報しか無いので、キャラクターの苦しみがガッツリ伝わってくる。これは初めての体験だった。

みんな重要人物に見えてくる

前情報も何もないので、いま画面に映っているキャラクターが重要な役回りかどうかは見た目の雰囲気と、そいつが語る人となりから判断するしかない。しかし今回は言葉を拠り所に出来ないので、かなりビンビンになってキャラのことを見ていた。半ば疑心暗鬼のような感じである。

何かシュッとした野原ひろしみたいな見た目のキャラ(あくまでも主観)が居るのだが、こいつはチョイ役だと思っていた。

しかし3カット以上きちんと映るので、「こいつもしかして重要人物なのか?」と疑わざるを得ない状況になってきた。実際、そこそこ登場するサブキャラのようだ。そこで私が発見した、一つの、あくまでも一つのキャラの重要性の判断基準がある。

3カット以上映って、コックピットに座るヤツは、多分モブキャラではない。

このシーンで何となくこいつを見る姿勢を決めた

「いや、そうでしょうね」と思うだろう。私は当たり前の事を言っている。でも、何かを絶たれた時、失った時、そこで初めて人間は当たり前のことを改めて認識し、それを噛みしめるのである。こういう「当たり前」をきちんと理解し、コントロールする力こそ、デザイナーに求められる能力なのだ。この体験には大いに価値があった。

唯一つだけ理解出来たシーン

大筋も細かい所もほとんど理解出来ないままずーっと観ていたが、13話までの中で唯一理解することが出来たシーンがある。第11話のある場面だ。

緑色の髪の女の人(名前判らん)の能力によって、何かビジョンを見せられたスゥザァクが謎の空間に飛ばされる。

ん?何か知らないオッサン出て来た!これには心底慌てた。

…papa

この人、スゥザァクのパパなんだね。

このシーンのみ。13話の内、このたった数秒だけが理解出来た。まぁ言葉の意味が判っただけでお父さんではないのかもしれないのだが…。

かくして、私のコードギアスをフランス語で観る日々は、結構な疲労感を残して、だがしかしあっけなく終わりを迎えた。数日に分けて視聴したが、時間にすれば約6.5時間。あっという間である。「短い」と仰る方も居るかもしれないが、是非やってみて欲しい。全く理解出来ない言語で全く知識の無い作品を観てみて欲しい。6.5時間も観れば、色々な意味でお腹いっぱいになるはずだ。これもまた発見だった。

それはそうと、この人の顔のシワは一体どうなってるんだ。

ていうかこれシワなの?

コードギアスを日本語で観る

色々と比べる為に、さっそく日本語での視聴を開始した。何故か物凄くドキドキする。

皇歴2010年8月10日、神聖ブリタニア帝国は…

うーわやっべえ日本語だ…涙出そう……

でも何というか、違和感が凄い。これは私が知っているコードギアスじゃない。私の中でコードギアスはすっかりフランス語の作品になってしまっていたのだ。刷り込みというのは、何とも恐ろしい。

さて、フランス語にこんなことわざがある。

Il faut de tout pour faire un monde.

(世界を作るには、全てが欠かせない要素である)

オオノさん、本当に有難う。これはオオノさんが私に与えてくれたチャンスだ。こんな事でも無ければ、私はフランス語で日本のアニメを観ることは無かっただろう。その過程で、たくさんの感情と出会い、たくさんの「当たり前」に気付いた。これは私の今後のデザインに、確実に良い影響をもたらす筈だ。不必要な時間なんて、この世には存在しないのである。

母さん、いま僕は、日本語でコードギアスを観ています。ずっとフランス語で喋っていた人たちが日本語で喋っていて違和感が凄いです。でもストーリーが理解出来て、もうそれだけで感動しています。

そうそう、とても驚いた事がありました。第1話のルルーシュが初登場するシーンの、貴族のオッサンのセリフです。

「なんだ、学生か?」

ド頭で学生ってことが判明してたんだなあ みつを

第3話で腰を抜かした僕ですが、日本語版では1話目からさっそく腰を抜かしたのでした。これから何度も何度も抜かすんでしょうね。

母さん、コードギアスは、めちゃくちゃ面白いです。

fin(おしまい)